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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

「…千晴…お兄ちゃま…?
どうして…?」
紗耶は素早く起き上がり、褥の上で呆然と千晴を見上げる。
千晴がゆっくりと長い脚を折り、紗耶と視線を合わせる。
…鳶色の瞳…。
藤木の榛色の瞳では、ない。
「…藤木さんと約束をしたんだ…」
千晴の眼が紗耶の白綸子の夜着に注がれる。
やや寝乱れた白い胸元から苦しげに眼を逸らし、自分のツイードのジャケットを脱ぐと、紗耶の華奢な肩に羽織らせた。
「約束?何の?」
「…紗耶ちゃんと一日だけ一緒に過ごさせてくれ…て。
一日だけ…一緒に過ごせたら、紗耶ちゃんの前から綺麗に消える。
そうして、もう永遠に紗耶ちゃんとは関わらない…と」
「嘘だわ!そんなの!」
紗耶は叫び、立ち上がる。
「先生!先生!どこなの⁈」
闇雲に走り出す紗耶を、千晴が羽交い締めに抱き留める。
「紗耶ちゃん!
彼はもうここにはいない!」
「…え…?」
驚愕に切長の瞳を見開く。
千晴が教え諭すように静かに口を開く。
…切なげな…哀しみの色の眼差しのまま…。
「…彼はもう日本にはいない。
そういう約束をしたんだ。
もう金輪際、紗耶ちゃんの前には姿を現さない。
悪いのは全て自分だ。
紗耶ちゃんは悪くない。
だから、紗耶ちゃんを許してあげて欲しい…と。
…僕はその約束を飲んだ。
だから君を迎えに来た」
どうして…?」
紗耶は素早く起き上がり、褥の上で呆然と千晴を見上げる。
千晴がゆっくりと長い脚を折り、紗耶と視線を合わせる。
…鳶色の瞳…。
藤木の榛色の瞳では、ない。
「…藤木さんと約束をしたんだ…」
千晴の眼が紗耶の白綸子の夜着に注がれる。
やや寝乱れた白い胸元から苦しげに眼を逸らし、自分のツイードのジャケットを脱ぐと、紗耶の華奢な肩に羽織らせた。
「約束?何の?」
「…紗耶ちゃんと一日だけ一緒に過ごさせてくれ…て。
一日だけ…一緒に過ごせたら、紗耶ちゃんの前から綺麗に消える。
そうして、もう永遠に紗耶ちゃんとは関わらない…と」
「嘘だわ!そんなの!」
紗耶は叫び、立ち上がる。
「先生!先生!どこなの⁈」
闇雲に走り出す紗耶を、千晴が羽交い締めに抱き留める。
「紗耶ちゃん!
彼はもうここにはいない!」
「…え…?」
驚愕に切長の瞳を見開く。
千晴が教え諭すように静かに口を開く。
…切なげな…哀しみの色の眼差しのまま…。
「…彼はもう日本にはいない。
そういう約束をしたんだ。
もう金輪際、紗耶ちゃんの前には姿を現さない。
悪いのは全て自分だ。
紗耶ちゃんは悪くない。
だから、紗耶ちゃんを許してあげて欲しい…と。
…僕はその約束を飲んだ。
だから君を迎えに来た」

