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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
…「紗耶…紗耶…」

…遠く…緩やかな波紋が立つ水面の上から静かに、その声は聞こえてきた。

…誰…?

ああ…先生だわ…。

だって、私たち昨日一緒に眠ったのですもの…。

…眩い冬の朝陽…微かな潮の香り…穏やかな波の音…
それらは、昨夜の蜜月の確かな証しだ。

紗耶は身体がふわりと浮かぶように嬉しくなり、瞼を閉じたまま微笑んだ。
まだ、眠りの水底に揺蕩う紗耶は、睫毛を振るわせ口唇に笑みを浮かべる。

…先生…早起きだわ…。

「…先生…もうおきたの…?」 
甘えるように小さく尋ねる。


…「…紗耶ちゃん…」

その声と遠慮勝ちに肩を揺さぶる手に、少しだけ違和感を覚える。

…この声は…この手は…覚えがある…。

まだ半覚醒の脳に、微かな緊張が走る。
薄い紗幕が開くように目覚め始め、紗耶はゆっくりと瞼を開く。

「…あ…」

…私は…まだ、夢を見ているのだろうか…。
…だって…このひとは…

紗耶は何度も瞬きを繰り返す。

…目の前で、どこか哀しげに紗耶をじっと見つめているひとは…

「…千晴…お兄ちゃま…?」

…高遠千晴、そのひとだったのだ…。

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