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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

…信じ難い言葉の数々が、紗耶の鼓膜に響き渡る。
「…嘘よ…そんな…!」
…愛している…と、何度も言ってくれたのに…!
何度も熱いキスをくれたのに…!
…あの狂おしくも甘いキスは、まだ紗耶の口唇に纏わりついているというのに…。
冷え冷えと、身体の芯まで冷え込むような冷たい廊下に座り込む紗耶を憐れみと、明らかな嫉妬の眼差しで、千晴は見つめ…ゆっくりと跪く。
「…紗耶ちゃん。
だから僕と一緒に帰ろう。
今ならまだ間に合う。
紗耶ちゃんは急に気分が悪くなって婚約式は取りやめたことになっている。
この出来事を、親族はまだ知らない」
「え?」
紗耶は息を呑んだ。
緊張感が走る紗耶の手を、千晴は優しく握りしめた。
「紫織さんも政彦兄さんもとても心配しているよ。
…特に紫織さんは…ショックのあまり、一時気を失われたほどだ」
…お母様!
紗耶の胸が激しく痛んだ。
「お母様大丈夫?
あの…お腹の赤ちゃんは…?」
泣き出しそうに千晴を見上げる紗耶に、千晴は安心させるように頷いた。
「大丈夫。
異常はないそうだ」
「…良かった…」
深く息を吐く。
…良かった…。お母様に…お腹の赤ちゃんに…何もなくて…。
何かあったら…何かあったら、私は生きてゆけない。
…だって、その責任は全て私にあるのだもの…。
俯く頭上から、穏やかだが温もりを微塵も感じさない淡々とした声が掛かる。
「…けれど、大お祖母様は大変に怒っておられる。
今日は政彦兄さんと紫織さんが呼び出され、何らかのご沙汰があるだろう」
「…ご沙汰…って…まさか…」
紗耶の白い頬が引き攣った。
「…嘘よ…そんな…!」
…愛している…と、何度も言ってくれたのに…!
何度も熱いキスをくれたのに…!
…あの狂おしくも甘いキスは、まだ紗耶の口唇に纏わりついているというのに…。
冷え冷えと、身体の芯まで冷え込むような冷たい廊下に座り込む紗耶を憐れみと、明らかな嫉妬の眼差しで、千晴は見つめ…ゆっくりと跪く。
「…紗耶ちゃん。
だから僕と一緒に帰ろう。
今ならまだ間に合う。
紗耶ちゃんは急に気分が悪くなって婚約式は取りやめたことになっている。
この出来事を、親族はまだ知らない」
「え?」
紗耶は息を呑んだ。
緊張感が走る紗耶の手を、千晴は優しく握りしめた。
「紫織さんも政彦兄さんもとても心配しているよ。
…特に紫織さんは…ショックのあまり、一時気を失われたほどだ」
…お母様!
紗耶の胸が激しく痛んだ。
「お母様大丈夫?
あの…お腹の赤ちゃんは…?」
泣き出しそうに千晴を見上げる紗耶に、千晴は安心させるように頷いた。
「大丈夫。
異常はないそうだ」
「…良かった…」
深く息を吐く。
…良かった…。お母様に…お腹の赤ちゃんに…何もなくて…。
何かあったら…何かあったら、私は生きてゆけない。
…だって、その責任は全て私にあるのだもの…。
俯く頭上から、穏やかだが温もりを微塵も感じさない淡々とした声が掛かる。
「…けれど、大お祖母様は大変に怒っておられる。
今日は政彦兄さんと紫織さんが呼び出され、何らかのご沙汰があるだろう」
「…ご沙汰…って…まさか…」
紗耶の白い頬が引き攣った。

