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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
…徳子の沙汰…。
それはもちろん二宮家の処遇についてだろう。
徳子は未だに日本国中に散らばるさまざまな分家を統べる高遠本家の女帝として、絶大な権力を手にしている。
そしてそれぞれの分家に援助や待遇を与える権限も、徳子の手中にある。
徳子の胸先三寸でその家の明暗は決まってしまうのだ。
彼女の意思には例え当主の千晴も逆らうことはできない。
それはもはや暗黙の不文律であった。

…まさか…大お祖母様…お父様に…。
徳子のメインバンクは政彦の銀行だ。
そして、その銀行の大株主のひとりでもある。
徳子の発言ひとつで、政彦の会社内で立場が危うくなることも大いにあり得るのだ。

「…そんな…そんなこと、許されないわ…!」
紗耶の呟きに、
「…紗耶ちゃん。
だから戻るなら早い方がいい。
…僕がお祖母様を取りなすから」
千晴はきっぱりと告げた。

「…千晴お兄ちゃま…」
紗耶は改めて千晴を見上げる。

…西洋の彫像のように美しい貌にはもはや華やかな輝きはなりを潜め、憂いを帯びた憂愁の表情しか映し出してはいなかった。

…こんな、千晴お兄ちゃまを初めて見るわ…。

紗耶の胸が切り裂かれるように痛む。

思えば、誰よりも一番に傷つけたのは千晴なのだ。
婚約式の当日に、他に好きな人がいると打ち明け、千晴のもとから逃げ出した。
千晴の貌に泥を塗った。
何より、その心を激しく傷つけた。

…私は…そんなお兄ちゃまにまだ謝ってもいない…。

紗耶は深々と頭を下げた。

「…ごめんなさい。千晴お兄ちゃま…。
紗耶は…お兄ちゃまに取り返しがつかない、酷いことをしたわ…。
いくら謝っても許されない…酷い酷いことを…」

胡桃色の廊下に、透明な涙が一粒溢れ落ちた…。


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