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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

私を虜にした…あの深い深い森に咲く百合と、ひんやりしたオークモス…それから、微かなカーネーションの薫り…。
その薫りはもはや手の届かないところにいってしまったのか…。
紗耶はあまりの喪失感に言葉を失くす。
「…紗耶ちゃん。
やはり僕とじゃ駄目なの?」
千晴の琥珀色の瞳が、紗耶を熱く…切なげに見つめる。
「…千晴お兄ちゃま…」
「僕はこれから君を束縛したりしない。
君の意思を尊重する。
君の人生を支えて、応援する。
紗耶ちゃんが藤木さんを忘れられなくても構わない。
…紗耶ちゃんが彼と…もう結ばれていたとしても、それでも僕は…」
辛そうな表情を浮かべながら語り続ける千晴に、紗耶は思わず口を開いた。
「…結ばれて…ないわ…」
「…え?」
千晴が端正な眉を顰めた。
「…私と藤木先生は、何もなかったわ。
…先生は私を傷つけたくない…て。
不幸にはしない…て。
…だから…ただ抱き合って眠っただけだわ…」
「…そう…なのか…」
…ほっと小さく息を吐いたのちに、何か考え込むように千晴が呟いた。
涙がはらはらと零れ落ちる。
…不幸にはしないとは、そういう意味だったのか。
一夜限りで、離れるつもりだったから、藤木は紗耶を自分のものにしなかったのか…。
それは彼の紗耶への優しさなのだろうか…。
…いいえ…
…違うわ…。
紗耶はそろそろと貌を上げた。
その薫りはもはや手の届かないところにいってしまったのか…。
紗耶はあまりの喪失感に言葉を失くす。
「…紗耶ちゃん。
やはり僕とじゃ駄目なの?」
千晴の琥珀色の瞳が、紗耶を熱く…切なげに見つめる。
「…千晴お兄ちゃま…」
「僕はこれから君を束縛したりしない。
君の意思を尊重する。
君の人生を支えて、応援する。
紗耶ちゃんが藤木さんを忘れられなくても構わない。
…紗耶ちゃんが彼と…もう結ばれていたとしても、それでも僕は…」
辛そうな表情を浮かべながら語り続ける千晴に、紗耶は思わず口を開いた。
「…結ばれて…ないわ…」
「…え?」
千晴が端正な眉を顰めた。
「…私と藤木先生は、何もなかったわ。
…先生は私を傷つけたくない…て。
不幸にはしない…て。
…だから…ただ抱き合って眠っただけだわ…」
「…そう…なのか…」
…ほっと小さく息を吐いたのちに、何か考え込むように千晴が呟いた。
涙がはらはらと零れ落ちる。
…不幸にはしないとは、そういう意味だったのか。
一夜限りで、離れるつもりだったから、藤木は紗耶を自分のものにしなかったのか…。
それは彼の紗耶への優しさなのだろうか…。
…いいえ…
…違うわ…。
紗耶はそろそろと貌を上げた。

