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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「大お祖母様…」

不服気に立ち上がる華子に徳子はぴしゃりと言い放つ。
「華子は席にお戻りなさい。
これ以上逆らうと貴女にも罰を授けますよ」

「華子ちゃん、こちらに来なさい!」
華子の母親が声を顰めながら腕を引っ張り、席に戻らせる。
華子の家は分家の二宮の家よりは本家に近く、発言力も権限もあった。
けれど一族の中でも才色兼備な紫織は、男性をはじめ親族たちに圧倒的な人気があった。
また、紗耶も昔から千晴に眼を掛けられていたということもあり、大人の中では密かに一目置かれていたのだ。

その紗耶を公衆の面前で罵倒し、喧嘩を仕掛けた華子はどう見ても分が悪かった。
この先、紗耶が千晴の花嫁候補から外れるとすると、華子は有力な候補者のひとりになるはずなのだ。
今、じたばたといつまでも醜態を晒すのは得策ではないと、計算高い華子の母親は判断したのだ。

嫌がる華子を猛烈な力で椅子に押し込みながら、母親は紗耶を見遣る。

一族の皆の視線に晒されながらも、紗耶は毅然とその場に佇んでいた。
その姿は今までの紗耶とは明らかに異なるものだった。

…いつも大人しく弱々しい紗耶さんの一体どこにあんな力が眠っていたのかしら…。

華子の母親は、密かにそう感心したのだった。
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