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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
華子の言葉がぐさぐさと鋭いナイフのように胸に突き刺さる。
紗耶は返す言葉も見つからず、立ち竦んだ。
…ゆらりと昔の暗い記憶が甦る。
仲間はずれにされたこと、抓られたこと、意地悪を言われたこと、そして…

大好きなテディベアのアリスを奪われ、放り投げられたこと…。

…あの時紗耶を助けてくれたのは…。

アンジェラの蔓薔薇のアーチの上にひょいとしなやかな手を伸ばし、優しく手渡してくれた千晴の面影が鮮やかに蘇る。

…そっと視線を上げ、千晴を振り返る。

千晴は紫檀の椅子に優雅に腰掛けたままだ。

じっとその美しい鳶色の瞳を紗耶に当てたまま…けれど、もう紗耶を庇うために立ち上がりはしなかった。

紗耶はがっかりはしなかった。
はっと我に帰れた。

…そう、私はもうひとりで闘わなくてならないのだ。
冷え冷えとした、荒野にひとり佇むような幻想に包まれる。
身震いするような覚悟を決め、華子を見据えた。

「…分かったわ。
私はこれからひとりで生きていくわ。
高遠の名前も、二宮の名前も、すべて捨てて…。
どんなことをしても、生きていくわ。
…この身体を売ること以外なら、なんでもしてみせるわ!
華子ちゃんに…もう二度とそんなことを言わせないわ!」

紗耶はゆっくりと前に進むと震える手で、華子の肩を突き飛ばした。

予想だにしない紗耶の意外な行動に華子は面くらい、思わずその場に尻餅をついた。

「な、な、何するのよ!」
華子は愕然としたように紗耶を見上げた。

「お返しだわ。
やられたらやり返す。
それが生きていくためのルールだって、アネゴに言われたもの!」
必死で叫んだ。

『やられたらやり返す!倍返しだよ、サーヤ』
アネゴが胸の中でエールを送ってくれた。

…アネゴ…ありがとう…!

広間は水を打ったようにしんと静まり返った。
…こんな誰も想像しえなかったハプニングは、恐らく高遠本家始まって以来の珍事であるからだ。


やがて、広間中に低くしゃがれた笑い声が長く響き渡った。

「やれやれ…。とんだキャットファイトだこと。
…時代は変わったのねえ。
世が世なら高遠家のお姫様たちが、まるで吉原遊郭の女郎の喧嘩のよう…。
なんて下品で浅ましいこと。
世も末だわ」

徳子が二人をゆっくりと見渡し、にやりとその薄く形の良い口唇の端を釣り上げた。

「…けれど、判定は私の仕事ですよ」
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