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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「何ですか?政彦さん」
徳子の短剣は、依然として紗耶の白い喉元に突きつけられたままだ。
1ミリでも動けば、その蒼く透ける細い動脈を掻き切りそうだ。

「…紗耶は今この瞬間から勘当いたします」

政彦の言葉に、親族一同から再び騒めきが立ち登る。

「あ、貴方…!?」
政彦の声に紫織が意識を取り戻し、驚愕の表情で眼を見張る。

「何ですって?」
徳子が細い眉をアーチ型に跳ね上げた。

「紗耶を勘当いたします。
二宮家当主の私が決めました。
…今から紗耶は私の子どもではない。
二宮家の娘ではない」

「貴方!
何を…何をおっしゃるの!
やめてください…!」
夫の元へふらふらと駆け寄ろうとするのを、千晴が抱き止める。
「まだ動いては駄目だよ、紫織さん」
「でも…政彦さんが…!」
声を詰まらせる紫織の肩を、千晴が優しく抱く。

「紫織さん、落ち着いて。大丈夫です。
…政彦義兄さんの話を聞こう」

その耳元で、紫織を宥めるように、微かに甘く囁いた。



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