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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…それで?」
楽しいパーティーの計画を尋ねるように徳子が言葉を重ねた。

政彦が一歩、徳子に歩を進めた。
「…二宮家の娘ではない紗耶は、もちろん高遠一族の娘ではない。
縁もゆかりもないただの他人です。
なんの関係もない赤の他人を、大お祖母様は殺めるとおっしゃるのですか?」

一同が息を呑んだ。

「…何ですって?」
猛禽類に似た鋭い眼差しを、政彦に宛てる。

「赤の他人を殺めると仰るなら、私も大お祖母様に忖度して口を噤む必要はない。
私は今すぐ警察に通報いたします」
「…警察?」
「はい。
私は善良な市民として、赤の他人がむざむざ殺されるのを指を咥えて見ているわけにはまいりません。
警察に通報し、真実をお話しいたします。
…無論、敗戦後のあの事件も…。
どれだけスキャンダルとして世間に取り沙汰されることでしょうか。
もはや、高遠家始まって以来の醜聞となりますまいか?
紗耶の恋愛沙汰などちっぽけな塵のようなものです。
…さあ、大お祖母様、お選び下さい。
たかだか一市民の娘を殺し、残り少ない余生を侘しい塀の中で過ごされるのか、それともその手を下ろされあの玉座に戻られて、今まで通り皆から尊敬され崇拝される高遠家の女帝として君臨なさるのか…。
…聡明な大お祖母様ならば、お考えになるまでもないことでしょう…」

まもなくして、芝居がかった大きなため息が聞こえた。
「…政彦さん…。
貴方、いつの間にそんな策士になられたの?」

憎々しげに睨みつける徳子に、政彦はにっこり笑いかけた。
「大お祖母様に鍛えられましたから…」

ふんと鼻を鳴らし、徳子は短剣をさらりと懐に仕舞った。

「…残り少ないは余計ですよ。
私はあと百年は生き続けますからね。
口の聞き方に気をお付けなさい」

…そうして、聞こえよがしに高らかに宣言した。

「赤の他人の小娘に用はないのですよ。
さっさと出ておゆきなさい。
…そうして、愛でも恋でも勝手に追いかけてゆけば良いわ」

徳子はそのまま肩を聳やかし七重を従えて、さながら畏怖される女王のように大広間を後にした。

紫織が千晴の胸の中でほっと息を吐き…
「…ああ…貴方…紗耶ちゃん…」
…そのまま、意識を手放した…。







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