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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

紗耶は長椅子に座り、ゆっくりとココアを口に運んだ。
「…美味しい…」
…身も心も疲れた紗耶に、甘く優しいココアは染み入るように感じた。
政彦は微笑んだ。
「それは良かった。
…紗耶はテルさんが淹れたココアが大好きだったね」
優しい微笑…。
いつも紗耶を守ってくれた優しく頼もしい政彦の微笑みだ。
「…お父様…」
頷いた途端、涙が溢れた。
…父への申し訳なさと、自分のしでかした大きさと、これから家を出る寂しさと…すべてがない混ぜになった感情の固まりだった。
政彦が傍らに跪き、紗耶の手をぎゅっと握りしめた。
「…紗耶。
よくお聞き」
ノンフレームの眼鏡越しの眼差しが真っ直ぐに紗耶を捉える。
「今ならまだ間に合う。
紗耶が千晴とのことを考え直すなら、お父様は大お祖母様のもとに伺い、心からお詫びする。
お詫びして紗耶を許していただくようにお願いをする。
土下座したって構わない」
紗耶は息を呑んだ。
「お父様!」
「紗耶の幸せのためなら、そんなことなんでもない。
お父様のプライドなんてどうでもいい。
土下座だろうとなんだろうとしてみせる。
お父様はさっき大お祖母様の前で、紗耶の命を守るためにああ言ったが、本当は紗耶を勘当なんて絶対にしたくない。
紗耶はお父様の命より大切な愛おしい娘だ。
お前を突き放すことなんて、したい訳がない。
…紗耶!分かるね?」
政彦の手が痛いほどに力を込めて、紗耶の手を握りしめた。
…その手から、瞳から、紗耶への無限の愛がひしひしと伝わる。
「…美味しい…」
…身も心も疲れた紗耶に、甘く優しいココアは染み入るように感じた。
政彦は微笑んだ。
「それは良かった。
…紗耶はテルさんが淹れたココアが大好きだったね」
優しい微笑…。
いつも紗耶を守ってくれた優しく頼もしい政彦の微笑みだ。
「…お父様…」
頷いた途端、涙が溢れた。
…父への申し訳なさと、自分のしでかした大きさと、これから家を出る寂しさと…すべてがない混ぜになった感情の固まりだった。
政彦が傍らに跪き、紗耶の手をぎゅっと握りしめた。
「…紗耶。
よくお聞き」
ノンフレームの眼鏡越しの眼差しが真っ直ぐに紗耶を捉える。
「今ならまだ間に合う。
紗耶が千晴とのことを考え直すなら、お父様は大お祖母様のもとに伺い、心からお詫びする。
お詫びして紗耶を許していただくようにお願いをする。
土下座したって構わない」
紗耶は息を呑んだ。
「お父様!」
「紗耶の幸せのためなら、そんなことなんでもない。
お父様のプライドなんてどうでもいい。
土下座だろうとなんだろうとしてみせる。
お父様はさっき大お祖母様の前で、紗耶の命を守るためにああ言ったが、本当は紗耶を勘当なんて絶対にしたくない。
紗耶はお父様の命より大切な愛おしい娘だ。
お前を突き放すことなんて、したい訳がない。
…紗耶!分かるね?」
政彦の手が痛いほどに力を込めて、紗耶の手を握りしめた。
…その手から、瞳から、紗耶への無限の愛がひしひしと伝わる。

