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異邦人の庭 〜secret garden〜
第17章 secret garden 〜永遠の庭〜
「いくら君からの頼みでも、それだけは聞けないな。暁」
風間忍は不機嫌そうに端正な眉を顰めた。

…ニース市街地から少し離れた聖ニコラ大聖堂近くの閑静な高級別荘地に風間の別荘はあった。
久しぶりの休暇を、暁のいるニースで過ごそうと家族でやってきたのだ。
珍しく暁が話があると自分から訪ねてきてくれたのを喜んだのも束の間、話は今一番考えたくない愛娘の恋人…とは断じて認めたくはないのだが…その青年のことだったのだ。

縣暁は四十の半ばを過ぎた頃だが、その美貌は昔と恐ろしいほどに変わらない。
二十代と言っても通用する若さと透明感を保った奇跡の端麗な容姿をしている。
…悔しいことに、今も尚、風間を惹きつけて止まない風間好みの美貌なのだ。
元々、初恋のひとであり妻の百合子によく似た容貌を暁はしているのだから仕方ない。

その、どこか儚げで繊細な美しさを湛えた貌に微笑みを浮かべ、彼は風間を見上げた。

「貴方らしくないですね。忍さん。
貴方はもっと寛大でリベラルな方だったはずなのに」
潤んだ黒眼勝ちな美しい瞳で見つめられ、風間は肩を竦め、わざと仏頂面を作ってみせた。

「自分の大切な娘のこととなれば、そんな綺麗事は言っていられないさ。
俺だって世間一般の普通の父親だ。
年頃の娘の付き合う相手となれば、将来に関わることだからな」

…その口調は傲慢に見えるが、微かに暁への甘えが透けて見える…そんな口振りだった。

暁は困ったようにほっそりとした首を傾げ、苦笑した。

「…ミシェルはとても良い青年ですよ。
どこがご不満なのか、僕には分からない…」

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