この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
異邦人の庭 〜secret garden〜
第17章 secret garden 〜永遠の庭〜
「…私たちが結ばれたのは、アキラのおかげだ…。
アキラが私たちのキューピッドなのだよ」
…長い追憶ののち、ミシェルが愛おしげに呟いた。
「ええ、そうだったわね。ミシェル。
…お父様は暁さんだけには弱くて特別だったわ。
お陰で、私たちは無事に結婚できたのだけれど…」
瑠璃子も懐かしそうに頷いた。
…その後ミシェルは、オテル・ド・カザマの本店、支店すべての花装飾を手掛けるようになり、フラワーアーティストとしての名をフランス中に知らしめた。
有名なハイブランドブティックのメゾンやカフェ、サロン、レストランからも声が掛かるようになり、忙しくなった。
義父となった風間忍は、ミシェルにホテルを継いで欲しかったらしいが、ミシェルは自分はその器ではないと辞退したそうだ。
ホテルはミシェルと瑠璃子の子ども、オックスフォード大学に進んだ秀才の長男が継いだ。
忍は本当に喜んだそうだ。
「…私と瑠璃子は息子がオテル・ド・カザマを無事に引き継いだのを見届け、故郷のニースに帰った。
そうして、本来のフラワーマーケットと温室、そしてこのペンション経営をのんびり続けているのさ。
瑠璃子と二人でね…」
「いまではパリのホテルも、孫が経営に関わっていますのよ。
ですから安心して余生を送れますの」
瑠璃子は控えめに誇らしげに微笑んだ。
「…そうですか。
それは良かったですね…」
「…両親も大変長生きしましたの。
幸せな一生だったと思います。
…ですから…暁さんと月城さんにはもっともっと長生きして欲しかった…」
瑠璃子がレースのハンカチで目頭を抑える。
そんな瑠璃子の肩を、ミシェルが優しく抱く。
「ルリコ…。彼らは一緒に天国に旅立てたのだよ。
彼らにとって、それ以上の幸福はないのだ」
「…そうね。そうだわよね…」
瑠璃子は自分に言い聞かせるように何度も頷く。
ミシェルがゆっくりと藤木に向き直った。
「…プロフェッサー。
愛するひとに巡り逢える確率は、奇跡に等しいのだよ。
その奇跡を、君は決して逃してはならない」
「…ミシェル…」
訝しげに眉を寄せていると、ミシェルの皺だらけの…けれど優しい手が藤木の後方を指差した。
「…ほら、あのマドモアゼル。
彼女は君をずっと待っていたのだよ」
藤木は素早く振り返る。
…そこに佇むひとを認め、信じられない思いに思わず叫んだ。
「…紗耶…!」
アキラが私たちのキューピッドなのだよ」
…長い追憶ののち、ミシェルが愛おしげに呟いた。
「ええ、そうだったわね。ミシェル。
…お父様は暁さんだけには弱くて特別だったわ。
お陰で、私たちは無事に結婚できたのだけれど…」
瑠璃子も懐かしそうに頷いた。
…その後ミシェルは、オテル・ド・カザマの本店、支店すべての花装飾を手掛けるようになり、フラワーアーティストとしての名をフランス中に知らしめた。
有名なハイブランドブティックのメゾンやカフェ、サロン、レストランからも声が掛かるようになり、忙しくなった。
義父となった風間忍は、ミシェルにホテルを継いで欲しかったらしいが、ミシェルは自分はその器ではないと辞退したそうだ。
ホテルはミシェルと瑠璃子の子ども、オックスフォード大学に進んだ秀才の長男が継いだ。
忍は本当に喜んだそうだ。
「…私と瑠璃子は息子がオテル・ド・カザマを無事に引き継いだのを見届け、故郷のニースに帰った。
そうして、本来のフラワーマーケットと温室、そしてこのペンション経営をのんびり続けているのさ。
瑠璃子と二人でね…」
「いまではパリのホテルも、孫が経営に関わっていますのよ。
ですから安心して余生を送れますの」
瑠璃子は控えめに誇らしげに微笑んだ。
「…そうですか。
それは良かったですね…」
「…両親も大変長生きしましたの。
幸せな一生だったと思います。
…ですから…暁さんと月城さんにはもっともっと長生きして欲しかった…」
瑠璃子がレースのハンカチで目頭を抑える。
そんな瑠璃子の肩を、ミシェルが優しく抱く。
「ルリコ…。彼らは一緒に天国に旅立てたのだよ。
彼らにとって、それ以上の幸福はないのだ」
「…そうね。そうだわよね…」
瑠璃子は自分に言い聞かせるように何度も頷く。
ミシェルがゆっくりと藤木に向き直った。
「…プロフェッサー。
愛するひとに巡り逢える確率は、奇跡に等しいのだよ。
その奇跡を、君は決して逃してはならない」
「…ミシェル…」
訝しげに眉を寄せていると、ミシェルの皺だらけの…けれど優しい手が藤木の後方を指差した。
「…ほら、あのマドモアゼル。
彼女は君をずっと待っていたのだよ」
藤木は素早く振り返る。
…そこに佇むひとを認め、信じられない思いに思わず叫んだ。
「…紗耶…!」