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異邦人の庭 〜secret garden〜
第5章 ペニー・レーンの片想い
「…え?千晴お兄ちゃまもご一緒に大学に…?」

翌朝の朝食の席、紗耶は思わずフォークを止めた。
…今朝も薔薇の庇のパーゴラの下の朝食だ。

支柱に絡まる淡いアプリコット色のペニー・レーンが甘い薫りを漂わせている。
夏が深まると、その花色は濃いピンクとなるのだ。

ペール・ローズ色の天蓋のようにポールズ・ヒマラヤン・ムスクが優しく揺れ、時折木洩れ陽を恩寵のように与えてくれる。

「ああ、そうだよ。
M大の文学部の准教授に僕の星南の高校時代の友人がいるんだ。
紗耶ちゃんを紹介したい。
もうアポも取った。
だから今日は一緒に大学にゆくよ。
…ああ、紗耶ちゃん。ほうれん草は残してはいけないよ。
ほうれん草には鉄分がたくさん含まれているのだからね。
女性は積極的に摂らなくては…」
サラダのルッコラをフォークに刺し、口元まで運ばれる。

傍らで給仕をしていたメイドが眼を丸くする。
家政婦の八重が軽く咳払いをし、メイドを眼差しだけで下がらせた。

頰を赤らめ、恥ずかしがりながら口を開いて食べると、
「ちゃんと食べたね。
偉いね、紗耶ちゃん。
それから、キャシャレルのワンピースがとても良く似合うね。
紗耶ちゃんは色白だからムーブ色が良く映える…」
と、まるで父親のように優しく微笑んだ。

…昨日の千晴とは、まるで別人のようだ。


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