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秒針と時針のように
第8章 おまけ
かっと睨み付けてきた忍の両手がオレを思い切り押し退ける。
逃げるのかと体勢を起こそうとしたら、上に四つん這いになってきた。
真っ赤な顔で、息巻いて、下半身もろだしで。
「忍?」
「っ、次はてめえ抜いてやる」
「えっ」
ベルトを外され、焦って忍の頭を掴むが、躊躇なくそれを握られ力んでしまう。
「な、どしたの」
「黙ってろ」
恐る恐る親指で先端を撫でたかと思うと、手を上下させる。
ぎこちない。
そのぎこちなさが堪らない。
額から汗が滲んでいる。
視線に気づいてオレを不安げに見た。
手は止めないまま。
「き……きもちよくないか?」
っっぅく。
くそ。
この……ばか。
んな涙目で。
変にニヤけてしまい、怪訝な顔をされる。
忍の手に、自分の手を重ねた。
「おいっ」
「こんくらい強く握んの。ちゃんと、忍の手の感触がわかるように。強く」
ぐちゃぐちゃと音が鼓膜を濡らす。
忍の手は細くて柔らかくて、上から握っているだけで折れそうだった。
間接的にオナニーしているみたいで興奮する。
忍もそうなのだろう。
恍惚とした目で凝視してる。
可愛い。
下にいるのはオレなのに、支配してる感じ。
「拓……イきそ」
「っ、ふ。もうちょい」
そこで手を離してやると、それまで通りに忠実に手をスライドさせた。
熱が昇ってきて、今すぐ忍を突き飛ばしたいほど強い快感に歯を食いしばる。
白い光が視界の周りを散っている。
眉に力を込めないと、訳がわからず泣きそうだ。
そんなオレを見て、忍が嬉しそうに笑った。
「えろい……」
「どっちがだよ……っん」
飛び散った液体が忍の胸を汚した。
取ってやろうとしたが、くたりと忍がオレの上に突っ伏してしまった。
あ、オレのシャツに付いたな。
これ。
はあはあ、とお互い息を整える。
オレは忍の頭を両手で優しく撫でた。
「めっちゃ良かったです」
「はあ……あ、なんで敬語なんだよ」
「ふははっ。なんでだろな」
「下手だったろ」
「んー。安心した」
「あ?」
「上手かったら嫌じゃん。どこでって思うし」
「どこで……ってそういう意味かっ、あほ!」
控えめに胸板をポカポカ殴られる。
こういうのは天性なんだろうな。
無自覚の。
罪すぎる。
「うわっ。なんで起ってんだよ」
「わり。もっかい」