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秒針と時針のように
第1章 gloss-プロローグ-
 ニコニコして待っていると、忍が手を止めた。
「なにしてんだ。自分の箸持って来いよ」
 オレは目を見開く。
「なんだ、その顔。俺が食べさせてやるとでも思ったのか?」
「思った」
 コクコク頷く俺を本気で突き刺そうとしてくる忍。
「人間、箸でも殺せるかもなあ?」
「ちょちょちょっ! なんでだよっ、ささやかな期待しただけだろ」
 太腿を刺され、ビクッと肩が強張った。
 ……ヤバ。
 反応しちゃった。
 脚を摺り合わせる。
 忍が不思議そうな目でオレを見る。
 ああ。
 あんな変なこと考えたせいだ。
「てめぇ……顔赤いぞ?」
「えっ! マジ?」
 急いで顔を押さえる。
「大丈夫か。熱あんのか。ちょっと額触らせろ」
 四つん這いで寄ってくる忍の胸元に目が奪われる。
 急いでオレは後ずさる。
 伸ばした手を空中で止め、忍は少し寂しそうな顔をした。
「……なんだよ。幼稚園からの付き合いなのに額触んのも嫌かよ」
「ちがくてっ!」
「もういい。餓死しろ、てめぇなんか」
 ああああ。
 なんでこんな時だけ可愛くなるんだよっ。
 オレは頭をかきむしって悶えた。

「忍っ!」
 いきなりの大声にキョトンと顔を上げる。
 その傾いた無垢な顔の今までのギャップに理性が崩壊する。
 口端についたオレンジの液体がもうエロく見えて仕方ない。
 濡れた唇。
 それを舐める舌。
「なんだよ、いきなり大声出し…」
 カランと箸が落ちる。
 オレは勢いで忍の唇を奪っていた。
 呆然として力の抜けた口に舌を入れ、音を立てて貪る。
 肉の味。
 忍が好きな味。
 クチュ。
「ん……」
 抵抗しようとした腕を掴んでベッドに押し付ける。
 細くて、簡単に壊れそうだ。
 脚を曲げたせいで、皿が傾いた。
 ガタンと、液体を飛び散らせて倒れる。
 飛散したそれが付いた忍の腋に舌を這わせる。
「んぁッッ」
「……やらしい声」
「し、ん……じらんね」
 オレは夢中で忍の体を楽しんだ。
 震える肩を噛み、首筋にキスマークを付けていく。
 ほとんど無防備に近いタンクトップを下にずらし、胸にも口付ける。
 そのたびビクつく忍が可愛くて仕方がなかった。
 もっともっと可愛い仕草が見たい。
 声が聞きたい。
 いつの間にかオレはベッドに忍を組み敷いていた。
 ギシ。
 その音に、目が怯える。
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