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秒針と時針のように
第4章 認めたくないこと
足の速さは確かに忍の方が上かも知れない。
けど、基本的な腕力はオレの方が圧倒的だった。
「拓」
赤くて柔らかい唇が動いて、オレを呼ぶ。
「拓?」
オレの知らない誰かのモノを咥えて濡れた唇が。
ビー玉みたいに綺麗な眼がオレを見上げている。
オレの知らない誰かに泣かされた眼が。
「てめぇ……離せ」
「なんで?」
「俺が訊きてえよ……」
忍の動向が開き、僅かに怯えた色を見せる。
「なんで、そんな怖い目してんだよ」
え?
空いている手で自分の片目を覆う。
ぴくぴくと瞼が痙攣している。
視線を動かす。
自分の意志で。
それからピタリと忍の眼に合わせる。
びくりと忍が強張る。
あれ。
なにこれ。
ぞくぞくする。
オレを怖がってる忍が、凄え可愛く見える。
「て、めえ……退かなきゃ殺すぞ」
いつもより迫力のない声も。
耳触りが良いのはなんで。
オレ、どうしちゃったんだ。
下ろした手で忍の頬を撫でる。
それすら恐れるように忍がぎゅっと目を閉じた。
嫌がるように逃げるが、体の自由がきかない状態では何の意味もない。
その反応が逆に楽しくすら思える。
顔を赤くして。
見たことない顔で。
眼尻に涙が滲んでいる。
すっと開いた眼がこちらを向いて歪む。
「さ……わんな」
「どうして?」
「頼む、から」
手の甲を頬に滑らせる。
「あっち、行けよ……マジで」
「忍はオレがきらい?」
応えない。
たぶん、質問すること自体間違ってんだ。
それだけは認識できるのに。
オレは動こうとしなかった。
だって。
あまりに忍が綺麗だから。
もっと眺めてたかった。
親指で唇をなぞる。
忍は心底厭そうにぎゅっと結んだ。
上唇の方に爪を差し入れる。
温かい咥内に、ぞくりとした。
初めは閉じていた歯を解き、熱い舌に指を絡ませる。
クチュリと。
戸惑うように固くなったそれを摘まむ。
閉じれなくなった口を半開きのまま、忍が息を荒くした。
「あ……う」
「なに、忍」
喋れないのをわかっていて、オレは残酷に尋ね返す。
苛立ったように眉をしかめて、忍は咬もうとするが力が出ないのか甘噛み程度にしかオレの指に抵抗できない。
口の端から唾液が伝い、つーっと首に流れる。
けど、基本的な腕力はオレの方が圧倒的だった。
「拓」
赤くて柔らかい唇が動いて、オレを呼ぶ。
「拓?」
オレの知らない誰かのモノを咥えて濡れた唇が。
ビー玉みたいに綺麗な眼がオレを見上げている。
オレの知らない誰かに泣かされた眼が。
「てめぇ……離せ」
「なんで?」
「俺が訊きてえよ……」
忍の動向が開き、僅かに怯えた色を見せる。
「なんで、そんな怖い目してんだよ」
え?
空いている手で自分の片目を覆う。
ぴくぴくと瞼が痙攣している。
視線を動かす。
自分の意志で。
それからピタリと忍の眼に合わせる。
びくりと忍が強張る。
あれ。
なにこれ。
ぞくぞくする。
オレを怖がってる忍が、凄え可愛く見える。
「て、めえ……退かなきゃ殺すぞ」
いつもより迫力のない声も。
耳触りが良いのはなんで。
オレ、どうしちゃったんだ。
下ろした手で忍の頬を撫でる。
それすら恐れるように忍がぎゅっと目を閉じた。
嫌がるように逃げるが、体の自由がきかない状態では何の意味もない。
その反応が逆に楽しくすら思える。
顔を赤くして。
見たことない顔で。
眼尻に涙が滲んでいる。
すっと開いた眼がこちらを向いて歪む。
「さ……わんな」
「どうして?」
「頼む、から」
手の甲を頬に滑らせる。
「あっち、行けよ……マジで」
「忍はオレがきらい?」
応えない。
たぶん、質問すること自体間違ってんだ。
それだけは認識できるのに。
オレは動こうとしなかった。
だって。
あまりに忍が綺麗だから。
もっと眺めてたかった。
親指で唇をなぞる。
忍は心底厭そうにぎゅっと結んだ。
上唇の方に爪を差し入れる。
温かい咥内に、ぞくりとした。
初めは閉じていた歯を解き、熱い舌に指を絡ませる。
クチュリと。
戸惑うように固くなったそれを摘まむ。
閉じれなくなった口を半開きのまま、忍が息を荒くした。
「あ……う」
「なに、忍」
喋れないのをわかっていて、オレは残酷に尋ね返す。
苛立ったように眉をしかめて、忍は咬もうとするが力が出ないのか甘噛み程度にしかオレの指に抵抗できない。
口の端から唾液が伝い、つーっと首に流れる。