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秒針と時針のように
第5章 一周してわかること
 廊下に出ようとした結城が振り返る。
「あ?」
「忍。変わったな、お前」
「そうか? 惚れんなよ」
「ははっ。今の忍のほうがおれは好きだ」
 それは、拓に言われたい台詞だな。
 だけど口にしない。
「早く行けよ、ばあか」
「了解しましたっ、忍殿下!」
 ほんと、バカばっかだ。

 中学三年の十二月。
 俺は進路相談室の資料を片っ端から眺めていた。
 あのババアとの小学校の頃の約束がある。
 義務教育を終えたら親子の縁を切るという約束だ。
 それまでは何があっても母親としての責任をとるが、その後は一人で生きてけってことだ。
 俺にも都合がいい。
 というか、言い出したのは俺のほうだしな。
 寮付の高校は少ない。
 だとすれば奨学金を取って公立高校に行ったほうがいいかもしれない。
 段を増していく資料を傍で眺める影に俺は気付かなかった。
 だから、肩にぽんと手が置かれた途端飛び上がって叫んでしまった。
 それから犯人を見て崩れ落ちる。
「……まじやめろよ、拓」
「ぶはははっ。ニィヤアア!?だって……可愛すぎんだろ、忍」
 背後からひょいと結城が顔を出す。
「せんせがいないからって騒ぐなよな」
「だったらこいつ連れてくんな」
「忍どこ忍どこってうるせえんだもん」
「受験前の昼休みくらい単独行動してもいいだろうが」
 拓が俺の見ていた冊子を奪い取る。
「忍ここ行くのか」
「あ? ああ。一応そこに決めようと思ってた。てめえは?」
「ここ」
 トンと冊子に指を置く。
「は?」
「だから、ここ」
「冗談」
「いやいや。マジで」
 結城がにやにやと様子を観察する。
「なんでだよ」
「だってオレの学力ならここだって担任が毎回いうし、面倒だからもうここでいいかなって」
「もっと真剣に考えろよっ。進路だぞ」
「真剣に考えたよ。この底辺中学からここ行くのなんてメチャクチャ登竜門なんだぜ」
「意味ちげーし。はあ? まじで」
「え? やなの?」
 ふっと空気が固まる。
 拓が俺に詰め寄る。
「オレと同じ高校やなの?」
「ち、ちげーよ」
「じゃあなんでそんな迷惑そうなの」
「どけ、バカ」
 壁際に追いつめられる。
 背中がぶつかった。
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