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秒針と時針のように
第6章 時針が止まる時
 結城が仕事を片付けて、オレが午前のみの授業を終えてから昼を一緒にすることになった。
 新入歓迎で利用したという居酒屋に連れていかれる。
「夜なら焼酎が飲めたんだけどな」
「オレはサワー派だ」
「ガキだな、たっくん」
「いうな」
 カウンターに二人で並んで腰かける。
 ランチに定食を出している珍しい居酒屋だった。
 大学から近いとはいえやはり客の殆どはスーツ姿だ。
 なんとなく萎縮しながら話を始める。
「じゃあ結局中学からなんも変わってねえんじゃん。なにやってんの、二人とも」
「別に変わってないわけじゃないけど……お互い変わろうとしてその一歩が出ないっつうか」
 タンと結城がお冷やを強く置く。
「一線越えたんだったらさっさと気持ち全部伝えりゃいいじゃんかよ」
 なんだ。
 スーツの効果か。
 結城が頼りがいあるように見える。
 焼き魚をつつきながらオレはため息を吐いた。
「はあ、じゃねえよ。もう今忍に電話しろ。今だ。おれが一緒だってとこから入れば言いやすいだろ」
 そう言ってオレの携帯を奪い番号を押し始める結城を急いで止める。
「展開が速えよっ」
「じゃあずっとうじうじすんのか。体の関係まで持っておいて!」
 それを言われると何も言い返せない。
 結城は画面を見てぱっとオレに携帯を渡した。
「だから今は」
「着信だ。噂すればプリンセスから」
 随分久しぶりに聞いたから誰のことかピンとこなかった。
 画面に浮かんだ忍という文字に応答ボタンをすぐに押す。
「もしもし?」
 声が裏返った。
 そばで結城がふっと笑う。
 だが、鼓膜を揺らしたのは聞きなれた声ではなかった。
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