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Gemini
第9章 溺れる体
「最後にルカに会ったのはいつ?」
「日曜日…この前の」

「その日は何かした?」
(何かって…)

パッと答えられない私を見て、ノアは何かしらいけないことをしたと察知したんだろう。
「分かった。いいよ、順番に教えてくれる?」

口調はとても優しくて、それが怖くて、ドキドキした。


「立ったまま……舐めてくれて…」
「へぇ…」
「フランス語…えっと…」
何度も繰り返し口にした、あの言葉を思い出そうとする。
「オム……オムニモ……パラディス…」

「emmène-moi au paradis?」
「そう、それ」

「……いい趣味してるな」
バカにしたみたいな言い方。

「俺にも言ってよ。」

「オムニモワ、ォパラディス」
「ちゃんと目を見て」
ノアのグリーンがかった瞳は、まっすぐに私だけを見ていた。

「オムニモワォパラディス…」
「いいね、確かに。もう一回。」
「オムニモワォパラディス」

私が言い終えると、ノアはルカみたいな顔をして笑った。
「それから…どうしたの?」

「ルカの…」
(待って!ペニスを…なんて、言えないよ…)

「何?ちゃんと言って?」
「言えない…」

「まさか…あれホントだったの?」
「何が?」
「カナデのvierge」
「ビエ…あっ、違う!ちょっとだけなの」

「ちょっとだけ?」
ノアが私の手を引いて、自分の目の前に立たせる。
「カナデ?ちょっとって、どういう意味?」

「少し…先のところだけ…」

ノアは天井を見上げて、大きく息を吐いた。

目を開けたノアは、長い腕で私を抱き寄せた。ちょうど胸のところに顔がきたけど、私はノアの頭を抱くことしかできなかった。
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