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Gemini
第10章 20cm
お店の中には、お客さんが一人しかいなかった。
「かずくんももう彼女ができる歳なのねぇ」
常連さんなのか、和樹をかずくんと呼んだその人は、鏡越しに私にもにっこり微笑んだ。
「それが、まだ、なんだって。」
和樹のお母さんが囁くようにそう言った。
「まだ?やだ、そうなの?」
「今が一番楽しいときよねぇ」
「本当よねぇ」
「じゃあこのまま10分置きますね」
手元のタイマーをピピッとセットしてから、私の方に向かってきた。
「ごめんなさいね、落ち着いてお話できなくて」
「いえ、あの、お邪魔します。これ、よかったら、どうぞ。お口に合うといいんですが…」
「あら、どうもありがとう!何かしら?」
「マドレーヌを焼いてきたんですけど…」
「まじ?奏が作ったの?すげぇ」
「奏ちゃんって言うのね?」
「あ!雨宮奏です。」
「奏ちゃん、今日はよろしくね。下手だったらちゃんと言ってやって。それも勉強だから。」
「はい、よろしくお願いします。」
「あっち、行こう」
お母さんの勢いに口を挟めずにいた和樹が、ぼそっと言った。
「荷物」
「え?あ、はい。」
差し出された和樹の手に持っていたバッグを渡すと、クリップをつけてお客さん用の棚の中にしまった。
「じゃ、こっちきて」
「うん」
常連さんの隣をひとつ空けて、奥の席に座るように言われた。
「着替えてくるから、ちょっと待ってて」
「うん」
「あ、雑誌…」
「いいよいいよ」
「すぐ戻る」
和樹が奥にあったドアから出て行くと、また常連さんに話しかけられた。
「かずくんの同級生なの?」
「あ、はい。学校は違うんですけど…。」
「どおりで。あの学校にしては賢そうだと思ったわ」
お母さんが笑ったのにつられて、常連さんも笑った。
「かずくんももう彼女ができる歳なのねぇ」
常連さんなのか、和樹をかずくんと呼んだその人は、鏡越しに私にもにっこり微笑んだ。
「それが、まだ、なんだって。」
和樹のお母さんが囁くようにそう言った。
「まだ?やだ、そうなの?」
「今が一番楽しいときよねぇ」
「本当よねぇ」
「じゃあこのまま10分置きますね」
手元のタイマーをピピッとセットしてから、私の方に向かってきた。
「ごめんなさいね、落ち着いてお話できなくて」
「いえ、あの、お邪魔します。これ、よかったら、どうぞ。お口に合うといいんですが…」
「あら、どうもありがとう!何かしら?」
「マドレーヌを焼いてきたんですけど…」
「まじ?奏が作ったの?すげぇ」
「奏ちゃんって言うのね?」
「あ!雨宮奏です。」
「奏ちゃん、今日はよろしくね。下手だったらちゃんと言ってやって。それも勉強だから。」
「はい、よろしくお願いします。」
「あっち、行こう」
お母さんの勢いに口を挟めずにいた和樹が、ぼそっと言った。
「荷物」
「え?あ、はい。」
差し出された和樹の手に持っていたバッグを渡すと、クリップをつけてお客さん用の棚の中にしまった。
「じゃ、こっちきて」
「うん」
常連さんの隣をひとつ空けて、奥の席に座るように言われた。
「着替えてくるから、ちょっと待ってて」
「うん」
「あ、雑誌…」
「いいよいいよ」
「すぐ戻る」
和樹が奥にあったドアから出て行くと、また常連さんに話しかけられた。
「かずくんの同級生なの?」
「あ、はい。学校は違うんですけど…。」
「どおりで。あの学校にしては賢そうだと思ったわ」
お母さんが笑ったのにつられて、常連さんも笑った。