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第10章 ２０cm

その夜、ちょうど夕ご飯を食べてるときにママのスマホが鳴った。

「えー？！」とか「ほんとに？」とか言って、だいぶ盛り上がってたから、何かと思ったら…
「椿がね、みんなで旅行行こう、だって」

椿っていうのは、ママの双子のお姉ちゃん。つまり、ノアとルカのママのことだ。

つーちゃんから旅行の詳細が送られてきた。
ママのスマホの画面を見せてもらうと、ビキニのお姉さんが色とりどりの魚と一緒に泳いでる。
「どこ？これ、沖縄？」
「正解！」
「すごいね」

（伊豆…しぶいって言われたしなぁ）


「みんなって、ノアとルカも行くってこと？」
「そうそう。だから奏も楽しいと思うよ」

ママたちが一緒ってことは…少し残念な気持ちとホッとする気持ちが私の中で混ざりあってた。

普段長く休んだりできないママにはゆっくり休んで欲しかったけど、旅行なんて行って余計疲れないかな？
でもママは「遠くに行ってゆっくり羽根を伸ばしたい！」と、ウキウキだった。



「新しい水着、買わないとね！」

さっそく翌日、theビキニっていうやつを買った。
当然ビキニだけになるつもりは無くて、一緒についてきたスカートとオフショルダーのトップスを上に着るつもり。

「つーちゃん、よくこんな時期に予約できたね」

「椿の友達に旅行会社に勤めてる人がいるんだって。あの子のことだから、無理やり頼んだと思わない？」

「まぁ、有りうるかも」

急遽決まった２週間後の旅行に向けて、ママと一緒に少しずつ準備を始めた。

水着と一緒に買ったヒールのサンダルを、向こうで履く用にバッグにしまう。三泊四日なのに大荷物になりそうな予感がする。