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Gemini
第3章 悪戯な笑み
傾いた体を受け止めたのはノアの胸だった。

「もういいだろ?」

頭を抱き寄せられて前髪越しのキスをおでこに感じた。
「Tu es mon trésor」

「勝手なこと言うなよ」

ルカが私の手を取って、自分の方に引っ張ると私の手首に優しくキスをした。
「Tu es si mignonne」

「ルカにはあの子がいるだろ」

「La ferme!」

「ちょっ…日本語で話してよ!」
一人会話についていけない私。

「ごめんごめん」
ルカが笑いながら私の手の甲を撫でる。

「カナデが欲しいんだよ、二人とも」
ノアも反対の手を同じように撫でた。

「ルカはなんて言ったの?」

「俺にうるさいって」
ノアが教えてくれた。

「カナデがかわいくてたまらないって
言ったんだよ」
そんな甘いことを言いながらルカがほっぺにキスをしてくるから、顔が赤くなってしまった。

「ノアは?ノアはなんて言ったの?」

「オレには渡さないって言ったんだよ」

「違う。カナデが大切だって言ったんだ。」

「つまり自分のもんだってことだろ?」

「ま、そうだけど」

こんな甘いことを平気で口にするって凄い感覚…。フランス語って恐ろしい。

「聞かなきゃよかった…」
真っ赤な顔が熱くてたまらなくなる。

「カナデはどっちを選ぶ?」
ノアは自信ありげな笑みを浮かべながら私の顔をのぞき込む。

「どっちって…そんなの…」

ルカは黙ったまま繋いでいた私の手を指先で撫でている。

「…いとこなんだから!選ぶとかそういう…」

それを聞いたルカの口元がふっと緩んだような気がした。
「別に選ぶことないよ、カナデ」

「いや、選んでもらわないとダメだろ」

「ちょっ…ど、どういう意…」
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