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Gemini
第13章 花火大会の夜
土手の辺りまで行くと和樹が立ち止まった。

「あの、さ…」

顔を見上げるけど、灯りが逆光になってよくは見えない。

「えーっと…その…俺の…」

(きっと、これは、もしかして、いわゆる…)


~♪~♪
「…あ、ごめん…気にしないで」
スマホを見るとルカからの着信だった。

生まれて初めてだけど、何となく分かる。
今電話にでるのはダメだ。

それなのに…
~♪~♪

一旦切れたと思ってもまたすぐに音楽が鳴る。

「いいよ、でなよ」

「…ごめん………………もしもし?」

[カナデ今どこ?今日たまちゃん夜勤だろ?]

「あぁうん…ちょっと、後でかけ直すよ」‪

[あ゛?…今どこって聞いてんだよ]

「川…の近く」

[花火大会?もう終わったろ?早く帰ってこい]

「分かってる」

[まさか、またあのチャラ男といるわけ?]

「チャラくないし!」
大きな声をあげてしまい、パッと和樹と目が合った。
(ヤバっ…)

やばいと思ったことがバレちゃったかもしれない…更にやばい…

[迎えに行こうか?また説教してやるよ]

「やめて!分かった!もう帰るから」

[駅着いたらコール、な?]

「分かったよ!もう!!」
スマホをしまって、和樹の方を見る。

「ごめんな、じゃ……行こうか」
目が合わない。合わせてくれない。

リセット…されてしまったような感じ。

「うん…」

並んで土手を歩く。


…無言。


それなのに、階段を降りるときにはサッと手を出してくれる和樹。
「ありがと」

手のひらに載せた私の指先をぎゅっと握った。
「また…会える?」

「旅行から…帰ってからなら…」

旅行という言葉を口にして、思い出してしまう。

(この沖縄旅行で私、ルカと…)
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