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Gemini
第13章 花火大会の夜
一瞬
裸で抱き合いながらお尻でルカと…
そんな自分の姿が思い浮かんでしまった。


動きが止まっていた私に和樹の顔が近づいてくる。

(え?キス……される?)
反射的に顔を背け、空いた手で自分の唇を隠してしまった。



僅かな沈黙の後


「ごめん…」
繋がれていた手は離れ、和樹は一人で段差を降りた。

駅の方に歩いていく和樹の背中を見ながら追いかけて歩く。
振り向いてはくれないけど、歩く速度はちゃんとゆっくりにしてくれる。


あっという間に駅に着いてしまった。

「じゃ…」

「あっ、和樹」

「地元まで送れなくてごめん」

「そんなのいいんだけど、あのっ」

さっきまでとはうって変わって足早に、そこからいなくなってしまった。追いかけるスキも与えてはくれなかった。


(キス…なんで避けちゃったんだろ…)

電車の中でも数えきれないくらいため息をつき、俯きながら改札を出る。

「はぁ…」




「いいね、すげぇかわいいじゃん」
脳天気に大きな声でそう言いながら、突然肩に腕を回してきたのは、迎えに来たルカだった。

「大人っぽくなるもんだな。メイクしてんの?見せて?」
ほっぺに手を当てられ、ルカの方を向けられる。

「うん。最高にかわいいよ」
チュッと柔らかい唇が重なった。

「やっ、ちょっと!」

「あぁごめん。かわいすぎて我慢できなかった」
ははっと笑って頭をポンポンしてくる。

(キスなんて、たったこれだけのことなのに、なんであんな風に…まるで嫌がってるみたいに…)

頭の中でグルグルとさっきのことばかり巡らせながら、家までの道をルカと並んで歩く。

「花火、混んでたろ?」

「…うん」

「よく見れた?」

「…うん」

「立ち見?」

「ううん、座って」

指先に和樹の指の感触がよみがえった。
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