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Gemini
第19章 滲入
もう着いちゃった…


あんなに楽しみにしてた水族館なのに、なんとなく心が曇っていた。


「大丈夫か?」
車を降りる私に手を差し出してくれたルカ。

ルカの指をきゅっと掴んでは、この指でいつもみたいに…と思ってしまう。
ハッとして、すぐにその考えを掻き消した。

ママたちがこっちを見てなくて良かった。

「案外近かったね」
ノアが言う言葉も何故か意地悪に聞こえてしまう。

「行くよー!」
ママとつーちゃんは、ふたりで喋りながら先を歩き始めていた。

「カナデ、寒くない?」

「は?バカじゃね?めちゃ暑いだろーが」
何も知らないルカが、私の肩を抱いて歩き出す。

(ルカだったら…)

いつもなら振りほどいていたはずの腕を、そのままにして歩いていく。
(あんな意地悪しないですぐに私を天国に…)

まるで邪心の塊だ。

ノアに熱くさせられた体を完全に持て余していた。


私たちの後ろをついて歩くノアが、フランス語でルカに話しかけた。すぐさまルカが立ち止まって聞き返して、ノアが答える。
それを聞いたルカが愉快そうにニヤニヤしながら私を見た。

「何?ノア!なんて言ったの?!」

「別にー?」
代わりにルカが答える。
絶対言ったんだ、パンツのこと。


(待って、つーちゃんだってフランス語分かるんじゃ…)
振り返ると随分先にいるふたりの姿が見えて、安心する。

(でもルカも知ってた方が、きっと私のこと…)
つい期待した顔でルカを見上げてしまう。


ただ普通に歩くだけなのに、撫でられ続けていた部分が敏感に反応する。

少し濡れてる感じがするのは汗じゃないかもしれない。

「早く見たいな」
ルカが私を見つめて言った。

恥ずかしいのに、胸がきゅっとなる。
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