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Gemini
第4章 フラッシュバック
「カナデさぁ…」
ドライヤーを止めると、細い指で私の髪を梳かしながら穏やかに話し始めた。
「ノアのことが、好きなの?」

「……まだ…分かんない…」
正直な気持ちが口から出ていた。
(こんな曖昧な気持ちを好きなんて言っちゃダメだよね…)

髪から降りてきたルカの指が、私のほっぺたをそっと撫でる。

「オレのこと好きになれば?」
目を伏せて私の髪にキスをするルカは、とても綺麗だった。まるで別の世界の出来事を見ているような居心地で、私の口からは言葉が何一つ出てこない。

でもそんなのはほんの一瞬で。数秒たって鏡越しにまた目が合うと、いつもの強気な表情のルカに戻っていた。

私の頭に顎を乗せて、後ろから抱きしめられる。顔面偏差値の差から目を背けたくなってしまう。

「カナデ」
名前を呼ばれて、またルカの瞳に視線を戻す。グレーがかっていて、まるで宝石のようにキラキラと輝いていた。
「かわいいな、カナデは」
「メルシー」

「mon bébé」
「何?」

ニッと笑ったルカに頭を抱き寄せられたと思ったら、今度はこめかみにキスをされた。少しずつ唇の位置が変わってきて、さすがに顔を背けた。
「なに?」
そう言って私の顔を覗き込む。

「なにって、何?」
(なんで当たり前にキスとかする流れになってるの??)
からかわれてるような気になっちゃって、つい怒った言い方になっちゃった。

「まじかよ……mon bébé」
ルカはまた強い力で私の頭を抱き寄せて、頭にキスをした。
「意味わかんないけど、やっぱバカにしてる?」

「まさか!」
そのまま背中に手を回される。ルカの胸に顔を押し付けられる。
「かわいいいとこを愛でてるだけだよ」
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