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Gemini
第4章 フラッシュバック
「あっ…あのっ…」
玄関に向かって行くルカの背中を追うけれど、何も言えないまま。

「風邪ひくなよ」
ルカは背中を向けたままそう言うと、出ていってしまった。


締まったドアを見つめたまま、廊下にしゃがみ込んだ。無意識に口を覆った手が唇に触れ、さっきのことを思い出す。
(ルカとキス…しちゃった…)

一日にいろんなことがありすぎて、頭かパンクしそうだった。



自分の部屋に戻るとまた頭がグルグルしそうだったのて、リビングのソファに横になった。テレビの内容もまったく頭に入ってこないし、お腹も空かなかった。

いつの間にか寝てしまった私は、帰ってきたママに起こされた。
「風邪ひくよー」

ルカの背中がフラッシュバックする。

はぁぁ…と大きなため息をついて、部屋に戻った。火照り出した顔は見られていないはず。




そして机の上を見て大切なことを思い出した。
(やば!私、テスト前じゃん…)


椅子に座ればノアを思い出し、思い直してベッドに座ればあのひと時を思い出す。気合を入れ直そうと顔を洗いにいくと、ルカのキスの感触が蘇る。


(ダメだ…絶望的…何も手につかない)


諦めて電気を消してベッドに入った。


ルカの言葉が何度もリフレインしていた。
「オレのこと好きになれば」

(顔は似てるのにノアのキスとルカのキスは全然違ったな…)

指先でなぞった唇は、ただくすぐったいだけだった。


(ぬけがけは、無しって言ってたけど…やっぱりそれって、最後までしちゃうって意味かな?)

一番大きいくじらのぬいぐるみをムギュッと抱きしめて、顔を埋めた。
「うぅぅぅぅー」
クジラの頭に口をつけて唸ってしまう。
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