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Gemini
第20章 海鳴り
ふたりとも黙って波の音だけを聞いていた。

水族館に行ったのが遠い昔の思い出みたいに感じられるくらいに、心と体が振り回されまくった1日だったな…



「ひゃあっ」
暗い海と空との境界線を眺めていると、突然にドアが開けられた。


ルカは頭だけを車に入れて、中をくまなくチェックしていた。まずは私の顔。体からスカートの裾。それからノアとしっかり繋がれた手、それからノアの顔。忙しなくルカの視線が動いた。

「何もされてねー?」

「う、うん…」
無意識にノアを見てしまった私の手を取ると、少し強引に車から降ろした。

「カナデが起きたら教えろっつったろ」
車の中に残ったままのノアに強めに言い放つと、勢いよくドアを閉めた。

ルカはブスッとしたまま私を胸の中にしまい込む。抱きしめたまま優しく髪を撫で、そのまま背中におり、腰に落ち着いた。

「花火、しようぜ」

「あ…うん」
まだ腰の奥に違和感が残っている。

「どうした?」

「うんん、なんでもないよ、しようよ!花火」
ルカの腕を抜けようとすると、もっと強く抱きしめられた。

「ルカ?」
黙ったまま何も言わないルカの名前をもう一度呼んだ。
「ルカ……」

急に込み上げてきて泣きそうになるのを必死で堪える。

「さっき…どこ行ってたの?」

「スマホ、充電切れてコンビニ」

「ふーん」
海の方を向いたまま、唇を噛んでゆっくり息を吐くと、何とか堪えきることができた。
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