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第21章 現実

「やめてよ…こんな…」

「食いたい」

「はぁ？もう離してってば」

「早くカナデ食いたいの」

意味が分かって、赤面する。
「……お家、帰ろ」

「走る？」
私を離したルカは、ぴょんぴょん跳んでアップを始めてる。
「は、走んないよ！絶対やだ！」

「んー、じゃ、ほら」
手を差し出したルカ。
手を繋ぐくらいなら…と、手を重ねた途端、グイグイと私を引っ張りながら走り出した。

「あはは！やだってば！ちょっ、ルーカー！」

「早くしろって、おせーな！」

ぐんぐん引っ張られて、マンションの前までついた。
「ほら、早かったろ？」

「はぁ、はぁ…もう、疲れたぁ…」

「若者が何言ってんだ」

「ちょっと体がなまってるだけだって」
大笑いしながらエレベーターに乗りこんだ。

「あー、大型犬飼ってる人の気分がわかった」

「おいこら！」
１００％の笑顔で振り向いたルカが、そのまま胸の中に私を取り込んだ。
「mon bébé？」

「なぁに？」

「いや、なんでもない」
ハグしながら、大人のキスをする。

（ルカのキスは優しいから、好き）

扉が開く直前まで続けて、開いた瞬間体を離して体を扉に向ける。誰もいないことが分かって、自然と視線が重なった。

そして
何も言わないまま、私たちはもう一度軽く唇を重ねた。