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Gemini
第5章 勇気
思い切って聞いてみた。
「ねぇ、ノア…ノアって彼女とかいるの?」

「彼女?いないよ」
「ふぅん…じゃあ、好きな人は?」
「大切な人ならいるよ」
「それって彼女じゃないの?」
「…どうかな?」

ノアの返事は曖昧で、なんだか誤魔化されてるような、丸め込まれてるような気分になった。


(じゃあどうして私にキスしたの?)
そう聞けたらいいのに。
勇気が出ないまま、時間はすぎていく。


「試験対策はもう大丈夫そう?」
「これが自力で解けるようになればね」
付箋をピラピラと指で弾いた。

「あんまり無理しないようにね。どうする?明日も来ようか?」
「なんか、ノア、忙しそうだからいいよ」
「いや、今日はちょっと急にね…だから、明日は大丈夫だよ。」

「でも、一人で平気。」
「そう…」

ノアは筆記用具を片付けて、机の上に散らばった消しカスを集めてくれた。
「最終日は明後日だっけ?」

最終日というワードに、心臓がギュッとなった。
「…うん、そう…」


それ以上その話はしないまま、ノアは帰ってしまった。今日はおでこにキスもしてくれなかった。

「はぁぁ……」
しまったドアに向かって大きく溜息をついてしまう。
(ん?これ…何に対する溜息なんだろ…)


そんなに簡単に気持ちは切り替えきれないけど、なんとなく机に向かって試験勉強の続きをする。今考えるべきは明後日のことじゃなくて、明日のことだ。


その後、何度もポーッとしかけたけれど、自分で持ち直して頑張ったと思う。

そのおかげで、試験の手応えもそれなりにあった。
試験一日目の帰り、お昼ご飯をまたあのファストフードで済ませようとオーダーの列に並んだ。

ハンバーガーのセットがのったトレーを持ってこの間の席に向かう。
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