パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第5章 勇気

（疲れてるなら家で休めばいいのに…）

そうしているうちに、両手をテーブルに乗せてガッツリと寝る体勢になってしまった。
眠っているのをいいことに、私はじっくりと観察するように見ていた。こっちを向いている顔があまりに無防備すぎて、それに、男の人がスヤスヤと眠る姿なんて見たことがなかったし。


結局一時間近く寝たその人は、目覚めた瞬間少し寝ぼけた顔で周りを見ていた。自分がどこにいるのか忘れてたみたい。その仕草がなんとも言えずかわいくて、ニヤニヤしてしまう口をノートで隠しながら観察していた。

そして、フッと私を振り返るとにっこり笑った。
「寝ちゃった」
「ぷふっ」
私は思わず吹き出してしまった。


そこからまた勉強を始めて、二杯目のドリンクがカラになる頃、その人から話しかけてきた。
「まだやる？」
「え？」

「いや…一人残していくのが心配でね」

（あぁ、もう帰るってことかな？）
「うーん…私も帰ります。」
それを聞いたときのホッとしたような表情が嬉しかった。

お店の前を出てまた商店街を並んで歩いていく。
「いやぁ、捗った！」
「寝てたじゃないですか？」
「どうりでスッキリしたと思った。」

その人が曲がる角で立ち止まる。
「じゃ、また」とどちらからも言わないまま、どうでもいいような話を続けていた。

「あのさ、名前…聞いてもいい？」
「あ、はい。えっと、カナ…」
名前を言いかけたとき、ルカが歩いてきているのが目に入った。あの時の女の人と一緒だ。

私は自分の姿が見えないように、体の位置をずらした。
「カナちゃんか。俺、ユウキ。」

私の不審な動きに気づいたのか、少し匿うように壁になってくれた。
「どうした？大丈夫？」
顔を近づけてコソコソと喋ってくれた。