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第5章 勇気

「だいっ、じょうぶです」
近づいた顔にびっくりして背中がシャキッとなったのをみて、その人…ユウキさんはスッと体を離した。
「ごめんごめん」

「じゃ、また」
「じゃ」
互いに手を挙げる。

「明日も試験？」
「はい、明後日まで」
「また行く？」

どうしようか決めてなかったので、答えに困る。

「もしカナちゃんが行くなら、時間合わせようかな？って思ってさ。」
「え…あ…じゃ…行きます。」
口が勝手に答えてた。

「オッケ、じゃ、また明日。」
「はい、また、明日。」


ユウキさんと別れて家に向かっていると、後ろから肩を抱かれた。

「カーナデ！今帰り？」

「ルカ？！」
（嘘…じゃあさっきの…ノアってこと？）


頭の中はパニック状態のまま、ルカと家へ向かって歩いていく。ルカの話には適当に相槌をうってるけど、内容なんて全然入ってこない。


「何か飲む？」
家の手前の自販機の前でルカが立ち止まった。

「あぁ…うん…」
（どれにしようかな）

たくさん並んだジュースを見てるとき、ルカが後ろからハグしてきた。
「ちょっとっ！」
「いいだろー。これくらい。」
「よくないよ！こんなとこで」
「じゃあ、どんなとこならいい？」

同じことを言ったあの時のノアの顔がチラつく。
「もぉっ！」

言葉が出てこなくて、ルカを自販機の前に置いたままマンションの方に向かって走り出した。

でも、正面玄関の鍵を開けている間にルカが追いついてしまった。

「はい、あげるから機嫌直して」
愉快そうに笑いながら、ミルクティのペットボトルを私の頭に乗せてきた。落ちかけたそれをルカがまたキャッチして、今度はちゃんと手渡される。