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Gemini
第23章 バランス
[ 今から電車乗るとこだから、もう駅に向かってきていいよ]

「あ、うん。分かった。じゃ、あとでね」

まだ切ってないのに、ノアが耳にキスをしてくる。全身に波紋のように広がるゾクゾク。


ピッと通話を切ると、今度は唇が重なった。
いつもと同じ、舌で掻き回すみたいな少し強引なキスだった。

「そんな顔して」
頭をよしよしと撫でられても、やっぱり残念な顔をしちゃう。
「続きはまた今度ね」


バッグに筆記用具を入れて、机の上を片付けてるノアをじっと見るしかできなかった。
別れ際、もう一度だけしたキスは唇が触れるだけの軽いものだった。


急いで着てたものを全部替えてから、駅へと向かう。

体を取り巻くモヤモヤとした熱はなかなか冷めることはなかった。ママとのご飯中も帰り道もいつもよりお喋りになって、なんとか気を紛らわせようとする自分がいた。


眠る前、ベッドの中で思い出したのはノアの舌に腰を突き出して近づけようとした自分の恥ずかしい格好だった。

ノアの意地悪が私の心を揺さぶる。
それは認めたくないけど、事実だ。
本当は普通の女の子でいたいのに。


パンツの中に手を入れる。
今度は恥ずかしい自分じゃなくて、トロトロに溶かしてくれるルカの指を思い出す。


「ルカ…」
優しいキスと、囁くような甘い声が恋しい。

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