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Gemini
第23章 バランス
「え…カナデ?どうした?」
ノアにしては珍しく、私の涙に慌てていた。

(我慢してたのに…)
(あとちょっとで家だったのに…)

ノアの前でボロボロと涙が溢れてくる。止めようとすればするほど息が詰まって、まるで子供みたいに肩が上下していた。

その時、別のエレベーターの到着を知らせる音がした。

「とりあえず、あっち、行こうか」
外階段のある方にノアが連れて行ってくれた。

「ごめ…っっ…ごっ……」
言葉が出てこない私の背中をポンポンと優しくたたいてくれるノア。

「たまちゃんも家にいたし、うちも今ちょっと無理でさ、ごめんね」
私の涙が落ち着くまで、ずっと腕の中にしまってくれていた。

背中を優しくゆっくりとさすってくれる手のおかげで、涙も少しずつ止まり、普通にしゃべれるようになってきた。
「ごめん…ありがと…」

「大丈夫大丈夫」
離れようと思ったのに、抱き寄せられてまたノアの胸におでこがつく。柔らかなハグのおかげで、ツンとする痛みが消えてきた。

「も…平気だよ」

「ん。もう帰る?」

「うん…帰る」

「じゃあ、またね」
今度はすんなり腕から力を抜いてくれて、簡単に一歩離れることができた。

「うん、またね」
ノアが何も聞かないでいてくれたのは気が楽だった。玄関を開ける前に振り返るとノアが見守ってくれていた。

軽く手を振ってから家に入ると、最悪な気分からは抜け出せていた。
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