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Gemini
第24章 普通じゃない
インターフォンを鳴らす前に家の中の様子をうかがう。

耳を塞ぎたくなるような声も聞こえてこない。
誰もいなさそうだ。

ふぅぅ…

合鍵を使ってドアを開け、玄関先に袋を置こうとしたその時だった。


「も…許し……イッ…」

「………」

「おで………しで……」

「………」

押し殺したような声が聞こえてくるのは、ルカの部屋からではなくて、向かい合ったノアの部屋からだった。

ボソボソと何かを話してる低い声も聞こえるけど、本当にノアなのかまでは分からなかった。

ドッドッドッドッ
心臓が大きな音を立てる。

音を立てないようにサンダルを脱いで、ノアの部屋のドアに近づいてみた。
目を閉じて聞き耳を立てる。

「あーあ、またやり直しだな」
いつもと違う強い口調で、ノアなのかどうか分からなくさせた。

「ぁ……ぁ……っ…ごべ…なざっ…」
女の人がすすり泣くような声で謝る。

(ダメだ、やっぱり、立ち聞きなんて)

後ずさりしたところにあった袋がゴトッと音を立てて倒れた。

ドッドッドッ
さっきよりも更に大きな音で心臓が暴れる。

袋から出てしまった桃を拾おうか、サンダルを履いてここから逃げ出そうか、どうしたらいいのか慌てるばかりで体が動かない。

「カナデ、ありがとね」

振り返ると上半身裸のノアが開いたドアのところに立っていた。唾を飲み込むとゴクッと大きく鳴った。
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