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Gemini
第6章 知らなかったこと
その笑顔が嬉しくて、私も手を挙げて更に振り返した。
(男の子って思ってたよりも…)


ホクホクした気持ちで電車に乗ったけれど、家に近づくにつれてドキドキに変わってきた。夕方まで凛たちと過ごすつもりだったから、予想外に帰りが早くなって緊張している自分がいた。

マンションのエレベーターに乗り、ついノアたちの家のある階の数字を見てしまう。

(あんな約束…忘れてる…よね…)
一人落ち着けない自分がなんだかバカみたいに思えてきちゃう。


家に着いて和樹を思い出す。『念の為』と初めて会った私のことを心配してくれた。
わかりやすく笑ったりはしないけど、ちゃんと話を聞いてくれてるって感じるのは、ちゃんと目を見て話を聞いてくれるから、かな?

バッグの中から手帳を出して、さっきのページを開いた。途端に緊張してきて、ボタンを押す前に少し練習してみる。
「もしもし、奏です。さっきはありがとう…ちゃんと家に着きました…」
(あ、敬語はダメか…)

「さっき、家に着いたよ。あのさ、また…」
(また……会いたいな…)
なんて、そんなこと言える気がしない。

とりあえず、心配かけないように電話はしないと。

[はい]
「あ、あのっ…奏です。さっきは…」
[着いた?]
「あ、うん。充電できた?」
[あの後ヒロたちと合流して、借りた。]
「そっか。会えたんだ、良かった。」

[で、時間、間に合った?]
「え?何が?」
[いや…時計、ずっと気にしてたから…]

(ウソ…私、そんな失礼なこと… )
「ごめんなさい、嫌な気持ちにさせて」

[…嫌な気にはなってない。]
「でも…」

シーンとしてしまう。
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