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Gemini
第6章 知らなかったこと
[あのさ………]
沈黙を破ったのは和樹だった。

[そっちがよければ…]
「え?」
[また何か食いに行かない?]

「えっ…?あぁっ、みんな…で?」
一瞬、私だけ誘われたのかと思ってしまった。

[いや……………………二人…]
「あっはい、行きます。」
恥ずかしい程に即答してしまった。

[だから、敬語…]
「あ、うん。行く。」

[じゃ、また連絡する]
「はい。じゃ…また…」
[うん、また。]



そのまま受話器を置いて、部屋へ戻るとベッドに倒れ込んだ。
「きゃぁあー」

胸がふわっとなって、きゅうってなる感じ…

何回も思い出してしまう『いや…二人』という和樹の言葉。和樹のボソボソという喋り方には、優しさと気遣いが隠れていると思う。

奈良橋和樹と書かれたページを開いては、また胸がふわっとなってしまう。


「シャワー浴びよっ」
結局15分くらい抱きしめて続けた手帳を机に置いて、やっと浴室に向かった。




タオルを頭に巻いたまま、冷蔵庫を確認する。今日の夕食は1人だ。とはいえ、自分で作れると胸を張れる程は作れない。
レパートリーとしては焼きそば、カレー、オムライスくらいなもの。
冷凍庫にうどんを見つけて、即座にメニューか決まった。小さなお鍋に汁を作って、中途半端に残っていたネギと鶏肉を入れ、最後に冷凍うどんを入れた。


テレビを見ながらちゅるちゅると啜る。

芸人さんが食べ歩きをする番組に見入ってしまう。和樹と食べるなら…そう考えながら見ている自分がいた。


もう少しで食べ終わりそうなところでインターフォンが鳴った。


カメラに映っていたのは…



ルカだった。
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