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Gemini
第7章 痕跡
放課後、学校を出るときに肝心なことに気がついた。

「凛…。手帳、家に忘れて来ちゃった。」
「手帳?」
「和樹の番号、そこに書いてあるの」
「えぇー?分かった、じゃあヒロに聞こ」


学校を出て駅までの間にある公園に立ち寄って、凛がヒロに電話をかけてくれた。

「ヒロー?あのね、和樹の番号教えて。」
[ なんで?なんでリンリンが和樹の番号…]
「違うから。奏が家に忘れちゃったの」
[ つーか、和樹ならここにいるけど?]
「じゃいっか、このままで。変わってくれる?」
[ ビデオがよくない?]
「確かにー!ヒロいいこと言うね!」
[ すぐかけ直すね]

「ってことになりました」
そう言うと、凛はスマホをカメラに切り替えて前髪をチェックし始めた。それから私の顔周りの髪を整えて、「よしっ!」と微笑んだ。

「まだ…心の準備が出来てなかったのにぃ」
「まさかの急展開だもんね」
凛は他人事だと思って楽しそうに笑ってる。

凛のスマホから最近よく流れてるラブソングが聞こえた。
「いいよ、奏、出て」
ふぅ…と息を吐いて心の準備をしてから、ビデオ通話…緑の表示をタッチした。

画面に出たのはヒロだった。
「あれ?ヒロ?」
凛もびっくりしてる。
「和樹は?」
「ちょっと待ってて」

見えるのは教室の中だった。そのまま廊下に出ると、そこには友達と話してる和樹が映し出された。
「和樹!」
「なんだよ、撮んなよ」
「撮ってねぇし。よく見ろ!」

まるでテレビのドッキリみたいに、和樹の表情が変わった。
何か言わなきゃと思ったけど、咄嗟に面白いことが言えるほど、私は気の利いた人間じゃなかった。

「あ、えっと、どうも…」
捻り出して出たのはこれだけだった。
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