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Gemini
第7章 痕跡
[ は?え?バカ!おいっ]
スマホを奪い取ろうとした和樹と、画面越しに一瞬だけ目が合った。
「あっ…」
[ あ、違っ、ごめん。ちょっ、ヒロっ!]


[ あー!噂の和樹の見合い相手じゃね?]
グルッと画面が動いて、別の男の子たちが画面に映り込んできた。

[ どうもー!なにちゃんですか?]
[ わっ、お嬢様っぽー]
[ こんちわー!]

「凛ー、どうしようー」

少し離れてた凛が近くに来てくれた。
「何これ…どういう状況?ヒロは?」
私が首を振ったときだった。

[ …ごめん…]
声だけが聞こえた。さっきまで騒いでいた人たちの声は、遠くなっていた。
「和樹…?」
[ あ…そう。]

凛がニヤニヤしながらまた遠くに離れて行った。

「あの…床しか見えないんだけど…」
[ 今ちょっと髪とかボサボサで]
「え?そんな…平気だったと思うけど…」
さっきからずっと青いラインの入った上履きしか、見えない。

[ ちょっと待って]
また動き出す画面。床がタイルに変わった。
(ん?トイレ?!)

[ はぁ…まじかよ…]
独り言みたいに呟く声が聞こえた。

「ごめんなさい…」

[ あ、いや、そーゆー意味じゃなくて、その…]
はぁぁ…と大きなため息が聞こえて、さすがに通話を切ろうとしたときだった。

[ 心の準備とか全然出来てなくて…]
ほっぺと耳が赤くしながら、おでこを掻いてる和樹の顔がやっと映った。下唇を噛んでる表情は、まるで笑いを堪えてるみたいだった。

[ うっす…]
画面越しの和樹は前会った時よりも少し子供っぽく見えた。髪型のせいかもしれない。

「急に電話してごめんね。凛が…あの…ヒロの彼女の…次にいつ会うのか決めなって言って…それで、電話してみようってことになって…」

[ 俺はいつでも暇だから、か……そっちの都合いい日言って]
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