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Gemini
第7章 痕跡
「こんなの見ちゃったら悔しくなっちゃって」
私の頭を肩に抱きかかえながら、太ももを手のひらでなでた。今度はそのまま宥めるように背中を撫でられて、ふぅっと私の肩から力が抜ける。

コテッとノアの肩に頭を預けて、ノアに撫でられ続けていた。

「ma chérie、ちょっと待ってて」
ノアは着ていたシャツのボタンを外して脱ぐと、私の肩にかけた。ノアの部屋で慣れてしまっていた鼻が、改めてノアの匂いに反応する。

「もう少し抱いてていい?」
そう言われても、露わになったノアの素肌に触れるのには躊躇いがある。

「カナデ、来て」

そう促され、ゆるくあぐらをかいたノアの中にすっぽりと収められた。そしてまた、髪や背中を撫でてもらう。でも今度は、まるで猫にでもなったかのような、ゆったりとした気分になった。ノアが優しく微笑んでたからかな。

私はノアの素肌にほっぺを当てて、その特別な空間を堪能していた。

心臓の音が落ち着いて、二人とも黙っていると、誰かの話し声が聞こえてきた。でもルカの声とは違う。テレビの音?

ノアの顔を見上げるとノアはまた首を傾げた。つられて私も首を傾げてしまう。

ノアは綺麗な指を1本唇の前につけて、ベッドから降りるとそーっと部屋のドアを開けた。

聞こえてきたのはあの声だった。
「ルカッ…ああんっ…奥がいいのっ…もっとっ」

「カナデ!こっち向けよ、ほら」
廊下の反対側にある部屋の中で、ルカはいつもより乱暴に私の名前を呼んでた。

「はぁあダメぇぇっ…深すぎるっ…いっくぅぅ」
「ダメだ、まだイクな!ほらこっち向けって」
バンバンとぶつかるような音が止まらない。

いつもと違う怖いルカの声に、ついノアの顔を振り返ってしまった。
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