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Gemini
第7章 痕跡
「カナデ!どこに出して欲しい?顔か?」
また名前を呼ばれて、ルカの部屋のドアに向き直る。
「口っ…口にぃ……はぁあああんっ…」
「口開けろっ…オレの目見てろよっ……」
「ああぁぅんっ…はぁんっ…はぁ……るかぁ…」
「カナデ…………っ……あぁ…はぁ…あぁ…」
きっとドアの向こうでなされている行為は私の想像で間違いないはず。ドアの向こうでカナデと呼ばれてるのが、あの女の人なのか…。あんな声だけでは判断できなかった。
(ノアの言ってた秘密って…)
突然ルカの部屋のドアが開いて、出てきたのはあの人だった。ビクッと体をおののかせて驚いていた。
目の前のドアに私とノアが立っていたんだから当然だ。
でも私も驚いていた。長くてきれいだったその人の髪が、私と同じ長さになっていたから。
「ナナ、もう帰るの?」
ナナと呼ばれたその人は、ノアの言葉には返事をしないまま私をひと睨みしてから玄関に向かった。
私は玄関から出ていくその人を見送ることしかできなかった。
「なんだよ。ノアいたのかよ」
ルカが少しだけ開いていたドアを開いて出てきた。
ノアと同じように上半身裸で、下にはスウェットを履いていた。
私の存在に気づいて、私の格好に気づいて、ルカは大きく目を見開いた。
「ふっ…ざけんなよ!」
ルカが凄い速さで手を伸ばした。ノアを殴るのかと思って身を竦めた私は、次の瞬間、ルカの胸の中にいた。さっきまでナナって人がいたであろう場所で、私は瞬間的にノアのことを心配した。
「大丈夫か?何された?」
ルカは私の体を確認するみたいにあちこち触った。
「なんだよそれ。ふざけんな。先にルールを破ったのはお前だろ?」
いつも穏やかなノアのこんな口調、私は初めて聞いた。