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Gemini
第8章 週末
本当はあのとき私の髪に触れたかったと、ずっと後になって和樹は教えてくれた。


家まで送ると言うのを断りきれずに、一緒に商店街を歩く。
「遅くなって怒られない?」
「多分仕事でまだ帰ってないと思う」
「え?そうなの?大丈夫?」
「平気平気。」

マンションの前まで着いて、バイバイしようとしたとき、ルカがマンションから出てきた。背中を向けてごまかそうとしたけれど、やっぱり無駄だった。

「おかえり、カナデ。随分遅い帰りだな。」

ルカは私の横にピッタリついて、肩に手を乗せてきた。
「いとこなの…」

「こんにちは、えっと…奈良橋かず」
「こんな遅くまで連れ回して、家まで送ればいいってもんじゃねーだろ?」

「ちょっと!ルカ!」
慌てて止めて、ついでにルカの手を肩から外した。

「…すいません」
「謝らなくていいから!ちょっと!」

「もういいから、帰れ」
ルカは駅の方角を指差した。
「すいませんでした。」

ぺこっと頭を下げて、歩きはじめた和樹。
「ごめん、和樹。LINEするから!」
背中に向かって大きな声で言った。

「カナデはああいうのが好みなの?」
「何が?なんであんな風に言うの?」
ルカを睨みつけた。

「悪そうなガキだな?なんだよ、あの髪」
「ルカだって似たような色じゃん!」
「オレはハーフだからいいの」
「染めてるじゃん!」

「分かってねーな」

ルカは私のことを引っ張って、強引に抱き寄せた。頭と腰を抱かれ、振りほどくこともできないまま、ルカの舌は私の中に入ってきた。
いつもとは違う、荒々しく乱暴なキスだった。

(待って…和樹がいるのに)
流れてくるルカの唾液を飲み込みながらも、なんとかルカの体を押し返した。
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