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第10章 軋み

……そうだ

スコールの中で、私の涙を拭ってくれた彼は
……こうして真っ直ぐ見つめてくれていた。


「理由は、小さな偶然が重なったとしか言えないけど」


繋がれた手を、秋は胸の前でもう一度握りしめた。


「あの時なんて、比べものにならねぇくらい
俺はしえりさんを想ってる」

「……！」

「自分でも驚く早さで好きになった。
……今は、はっきりと分かるよ」

「……っ」

「あなたの秘密を知っても、俺の気持ちは変わらない」



……心が、震える。

熱い想いが込み上げてくる。


「……っ」


堪らなくて、彼の胸に顔を埋めた。
言葉にならない。


「蓮さんがあんなに心配するくらいだから
こうなるって決まっていたかもしれないけどね」

「……！」

「1人だなんて考えるな。
あんたを大事にしたいって思うのは、俺だけじゃない」


優しい手が、私を包んで
秋が耳元で囁いた。



「それにちゃんと分かってる。
しえりさん、あなたは本当は強い」


「……っ」


「大丈夫。
最後はきっと、自分自身で乗り越えられるよ」