この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
アンケートから生まれた Love story
第10章 軋み

秋の会社側、創建当時の姿に復原された駅舎。
オフィス街へと続く改札を出ると
石膏パーツのレリーフが美しい、ドーム天井のフロアスペースがある。
「ここで待って」
ゴシック調の丸い柱の前で止まって、秋がスマホを取り出した。
左隣りに並んで、高い天井裏の繊細な模様を見上げる。
「蓮さん、着きました。
・・・はい、ちゃんと分かってます。だから一緒に居ます」
ぷぷっ、秋、敬語だ。
思わず笑っちゃった。
先輩なんだから当たり前だけど、いつもと声質も違う。
「………」
……今、蓮さんって言った。
そういえばこの前も言ってた。
秋は私の4つ年下で、先輩は当然それ以上で。
つまり私の年下ってこともありえるわけで。
‟ なんで気付かないわけ? ”
‟ 俺は姫宮蓮に気付いたのに ”
……まさか、本当に……?
精悍な顔をした
もう1人の黒髪の彼が脳裏に蘇ってきた
─── 同時に
「……!!」
パンッと、耳を劈くような衝撃音と共に
左頬に痛みと血の味が広がった。

