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アンケートから生まれた Love story
第10章 軋み
「……っ」
左頬を押さえて、一瞬頭が真っ白になったけど
……目の前に立つ、その人の全身を見なくても
足元だけで私を叩いた正体に気付いた。
「……お母さん」
同じ背丈。
私と違うのは、今年還暦になった歳と
短いボブの髪、眼鏡と……酷く冷たい視線。
「どうしてここが……」
息を大きく吐いてから、当然出てくる質問をしたけど
汚らわしいものでも見るような目で、彼女は何も言わずに黙っている。
……いつも、そう。
全部私に言わせて、その答えを否定して。
結局私が悪いって結果にしかならない。
「電話が繋がらないから、昨夜のうちに出る準備をして
まずはあなたのマンションに行ったのよ」
真っ赤に塗ったルージュ。
低い声でようやくそう言った母は、さらに深い溜息を吐いた。
「私から本気で逃げたいのなら、携帯電話の電源を切ることね」
「……!」
「そんなことも気付かないなんて、やっぱりあなたは出来ない子だわ」