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第12章 痛みを、強さに

＊　＊　＊


前と同じ発作と症状だと思っていたのに
救急搬送された翌日に帰れるはずだった俺の退院日は、１週間も後だった。

心身にダメージがあるから検査を、という主治医の言いつけを守り
蓮さんが手続きした個室で、大人しく入院生活を送ったわけだけど

結局なんてことない薬だけ処方されて

今日、世間が夏季休暇に入る日曜の午後に、ようやく解放されることになった。


「……！」


ベッドの上に乗せた、少ない荷物を鞄にしまい終えた時
後ろからコンッとノック音が聞こえて

振り返った先の、開かれた病室の扉に
片手を付けた背の高い男が１人立っていた。


「……瀬名さん」


日曜日なのに、シャツとスーツ姿で
左手に握ったキャリーケースを見れば、何も言わなくても帰国直後だと分かる。


……今月、この人に出張は無かったはずなのにな。