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アンケートから生まれた Love story
第12章 痛みを、強さに
……イタリアンアクセント……
そういえば
過去の案件で、瀬名さんが通訳なしで会話をしていたって同僚から聞いたことがある。
なんでも出来るんだなあの人って、然程驚かなかったけど……
「お前も変だと思わねぇ?
中南米でも使える世界三大言語ならともかく、伊語なんてほぼその国しかねぇのに」
「………」
「標準語・共通語とは異なる発音。
……訛りから、出身地を特定されたのは初めてだった」
─── 軽快だった会話の空気が、がらっと変わった。
瀬名さんの声が低くなると同時に
まるで連動するかのように、吹き荒れていた風がピタッと止まる。
「……瀬名さん…?」
「3ヶ月前、生意気な令嬢にネタにされかけたけど
31年間ずっと封印してきたことだ」
「……!」
「……俺には
戦友にも、恋人にも言っていない過去がある」
そう言って、俺に体を向けた瀬名さんは
ゾクッと身震いするような、威圧的な目で
真っ直ぐ俺を見据えた。
「 “ 瀬名葵 ” は、偽名 」
「……!」
「だけど出生の真相も、本当の名前も知らない。
断片的に打ち明けて消えた両親とも、血は一滴も繋がっていなかった」
「……っ」
「── 俺は生まれる前から既に放棄されて
生まれた時から、偽りの人生を生きている」