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第5章 スコール

……本来１番楽しいはずの恋愛

一生を共にする約束をして
好きになったから婚約した……


私は、彼を好きだった？



「……普通は、そうよね」


ふいに胸の奥がざわざわと揺れて
チクッと刺すような痛みが広がる。


「だけど私の場合は違うんです」

「……！」

「社会人になってからお付き合いをして、去っていった彼等は皆……
最初に、 ‟ 私の条件 ” を飲み込んでくれただけ」

「………」

「ですから婚約した彼も
結婚するという目的だけで、私に対して恋愛感情は無かったと思います」


思いますっていうか、そうよね。
彼は最終的にお金だけ手に入れば良かったんだから。

……恋愛感情が無いのに、よく私と2年も一緒に過ごせたなぁ。



私にもまだあった、13年前の恋心。
ただ一緒に居るだけで嬉しかった青春時代。

ちょうどハタチを迎えたあの時は、ありのままの自分でいられた。


「先程あなたが思い出させてくれた
初恋の頃が、私の人生で１番楽しかったと思います」