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飛べないあの子
第5章 EpisodeⅤ
協議の結果、慧の休みの前日に凛が慧の家を訪れることになった。
キスした翌日に慧と顔を合わせたくないという凛の主張が通った。

今まで付き合ってからキスする仲になるという手順しか踏んでこなかった凛は、この状況をどう捉えたらいいのかわからず、戸惑いを抱えながらキスをしに慧の家に通っていた。

凛がこの先に進みたいとなかなか思えない理由は単純だった。
慧とキス以上のことをするのに抵抗があるからだ。
好きだと伝えた時が心も身体も結ばれる時のような暗黙の了解が二人の間にあるため、想いを確認しあうことを躊躇してしまう。

慧に裸を見られ、あらゆる場所をあの綺麗な指で触れられるのかと思うと恥ずかし過ぎて平静でいられない。初体験の時ですら、これほどまで相手に裸を見せることが恥ずかしいと感じなかった。

おそらく凛の中で慧を敬う気持ちが強すぎるのだ。
好きという感情だけじゃなく尊敬の想いがあるため、恐れ多いという感情の方が近いかもしれない。
自分じゃなかったら、さっさと付き合ってしまえとアドバイスするところだが、自分の事となると二の足を踏んでしまう。

おそらく慧は凛の気持ちが固まるのを待っていてくれている。

(’友達’とか’同級生’とかの段階をちゃんと踏んでいたら、また違ったのだろうか・・・・・・・)

あまり慧を待たせることは出来ないという焦りはあった。
もし慧が他の人と付き合い出したら、最早かすり傷では済まないだろう。

「中谷せんせえ~」

凛がホワイトボードの文字を消していると、三人の女子生徒が話しかけてきた。

「先生って、西辻先生のこと、どう思ってるんですかぁ?」

一人の女の子が無邪気さを装って、しかし、その下には多少の悪意を持って尋ねてきた。

「どうって・・・・・・」
「仲良いんですよね?」
「普通だよ」
「えー?でも、予備校以外でも会ったりするでしょう?」

(スーパーの件を言ってるんだろうか・・・・・・)

凛は無表情になって言った。

「会わないよ。あなた達が思っているような感情もありません」

えー?えー?とニヤニヤしている。

「じゃあ、先生ってどんな人が好みなの?」
「元彼の写真とか見せてよ」
「・・・・・・いいよ」
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