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寵愛の小鳥
第9章 籠の中 by悠月


「……お兄ちゃん…」


ことりがドアのすぐそばで、小さく俺に声かける。

今まで大きな喧嘩もしないで、

親からしてみたら手のかからない
仲の良い兄妹だったとおもう。

恋愛感情さえなければ、

普通に仲は良いだろう。


それさえなければ。


今日、俺の暴走で狂ってしまった関係性に、
ことりはどう返すのか…。

流石に緊張して、グッと拳に力が入る。


「……まず、ご飯でも食べないか?」
「へ…」
「お昼だってちゃんと食べてなかっただろ、
お腹減ってない?
……食欲は、あるか?」

本題に移るより今日無茶をさせすぎて
ボロボロなことりを見ていられず
そう提案すると、
ことりは困った顔をしている。

「俺と食べるのが嫌なら、
さっきの部屋にご飯持ってくから、
…どうだ?」
「や…別に、一緒でいい…よ…
食欲はそんなに無いから、
軽いもの食べたい」
「うん、そっか。じゃぁうどんとかでいいか?」
「う、うん」

困惑しながらも普通に会話してくれる
ことりに心底ホッとした。

あんな最低な事をした俺と
一緒の空間にも居たくないだろうと思っていたから、
健気なことりに胸の奥がギュッと締め付けられる。

椅子を引き、ことりを座らせると、
そのまま何もなかった素振りでキッチンへ向かう。

きっとことりの事だから、
悪い夢だったって慰めてもらいたがっているだろう…。

純粋なことりは、あんな最低な事をした俺を俺だと受け入れられないだろう。


ごめんな、ことり。

優しいお兄ちゃんでいるのは、
もう無理なんだ…。


背中になにか言いたそうなことりの視線を感じながら、余計な会話もせずに夕飯を作る。


ごめんな、せめて、あともう少しだけ、
ことりとの時間を良い思い出にさせてくれ。

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